日本で最初の鮭の博物館 イヨボヤ会館

イヨボヤ通信blog

「増殖」と「養殖」

2024年02月04日

先日から1F「サケのミニふ化場」で、新潟県内水面水産試験場魚沼支場様のご協力により魚沼美雪ますの稚魚の展示をスタートしました。

魚沼美雪ますは、ニジマスのメスとイワナ(アメマス)の偽オスを交配させ人工作出した県内魚沼地域ブランドの食用マスです。

新潟県内水面試験場が10年以上かけて開発し、平成18年から魚沼地域の生産者が養殖に取り組んでいます。

 

魚沼美雪ます(「サケのミニふ化場」より)

 

 

ところで、イヨボヤ会館の展示の中に散見されるキーワードに「増殖」という言葉があります。

 

「村上藩は世界で初めてサケの自然ふ化増殖に成功した土地です。」

「三面川で行われるサケ漁は、人工ふ化増殖を目的に行われています。」 等々…

 

 

イヨボヤ会館ではこの「増殖」という言葉を展示キャプションの中で意識的に「養殖」と分けて使っています。

しかし「増殖」という言葉は「養殖」に比べて一般的に馴染みが薄く、「ご来館の皆様の中には混同されている方もいらっしゃるかもしれない。」と以前から個人的に考えていました。

養殖品種の魚沼美雪ますが展示の仲間入りをしたこの機会に、「増殖」と「養殖」という言葉の定義の違いをあらためて説明していこうと思います。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『大日本百科事典(ニッポニカ)』の「水産増殖」の頁には、以下のような記述があります。

 

【水産増殖】

有用な水産生物の繁殖と成育を助長・促進させ、水域の生産力を利用して、それら生物の生産を維持し、増大することで、次の三つに大別される。

(1)禁漁期・禁漁区などのように、漁業に各種の制限・禁止をなし、水産資源の維持を図る。

(2)水産生物の種苗を移殖・放流して資源を増大する。

(3)水産生物の生息環境を改善・造成・管理し、水域の生産力を利用しながら、それら生物の繁殖と成育を助ける。

[出口吉昭]

 

【水産養殖】

一定のくぎられた水域内で、有用な水産生物を販売可能な大きさにまで育成する。(中略) 水の利用方法により止水式、半流水式、流水式、循環式、水面の区画方法によって網生け簀(す)、網仕切り、箱生け簀、構造によって築堤式、支柱式、小割り式に分ける。水の性質により淡水養殖と海面養殖または鹹水(かんすい)養殖、水の温度により温水魚養殖、冷水魚養殖とよぶ。

[出口吉昭]

 

(引用元 「コトバンク」 https://kotobank.jp/word/%E6%B0%B4%E7%94%A3%E5%A2%97%E6%AE%96-1345423 、2024/2/4 閲覧)

 

 

かみ砕いてまとめると…

増殖(水産増殖)とは: 漁で獲りすぎないようにしたり生息環境を整えたり稚魚を放流したりすることで、自然界の生物の繁殖と生育を助けて増やしていくこと。

 

養殖(水産養殖)とは: 囲われた場所で、生まれる前から販売可能になるまでを人の手で飼育すること。

というような趣旨になります。

 

ふ化から稚魚に成長するまで育てたのち放流する「増殖」に対し、飼育下で一生を送る「養殖」の手段の違い。

そして「増殖」の目的が自然資源の維持と増大にあるのに対し、「養殖」は営利目的なことにも際立った相違点があるようです。

 

この定義に則り、海に回遊するサケやマスの生育の一部を人間が助けることは「増殖」に分類されます。

その上でイヨボヤ会館では更に、江戸時代に村上藩行われたサケ(シロザケ)の繁殖期の禁漁と繁殖環境の整備——所謂「種川の制」を「自然ふ化増殖」事業、明治~現代に至るまで行われているふ化放流の取り組みを「人工ふ化増殖」事業と区分し呼んでいます。

 

一方養殖業界では近年、日本各地で「ご当地養殖サーモン」が脚光を浴びており、今回展示を開始した魚沼美雪ますもその一つです。

人の手で管理され育った養殖サーモンは寄生虫がいないため安心して生食することができ、レシピの幅も大幅拡大。

サケを愛する日本人の味覚を全国で愉しませています。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

今回、「増殖事業」で保護されてきた三面川のサケと、魚沼美雪ますという「養殖品種」とを並べて展示することで、より一層「増殖」と「養殖」との違いについて考えを深めていただける形になったと思います。

イヨボヤ会館にお越しの際は、是非このポイントに注目して魚たちを観察してみてください‪(*´﹀`*)‬

 

 

※「水産増殖」という語には「水産増殖」と「水産養殖」の意味を総括して広義の意味とする場合もあります。

 

 

 

written by イヨボヤ通信blog

種川水中生物探検隊を開催しました!

2023年07月23日

種川水中生物探検隊2023を開催しました!

コロナ禍明けの今年は初の2日間開催とし、昨日22日と今日23日に分けてのべ84人の小学生と保護者の皆様にご参加いただきました。

普段は県の保護河川として立ち入りを禁じられている種川(三面川分流)に特別に入り、水中にどんな生物が生息しているのかを調べました。

 

 

例年通り日本自然保護協会の自然観察指導員 富樫繫春先生にご指導いただき、お子さんたちに生物の採取の仕方や採取した生物の調査方法などを詳しく教えていただきました。

「初めて川に入る」というお子さんも沢山いらっしゃったようで、思ったよりも冷たい川の水温に最初は戸惑っている様子なども見られましたが、あっという間に慣れて皆さん採取活動を楽しんでいらっしゃいました。

「生き物は繁みの根元付近にいる」という先生のアドバイスのもと、草むらを目指してタモを差し込んでみる少年たち。

 

富樫先生と一緒に掴まえてみよう。

 

魚も沢山採取できました!

 

珍しい生物がとれたのかな?

 

採取後は図鑑を使いながら生き物を観察。生き物の名前を調べました。

なんて魚かわかるかな?

 

図鑑を見てもわかりにくい生物は、先生が見分け方を教えてくれました!

 

調べ終わったら模造紙の一覧表にシールを貼って、皆さんで採取した生物の集計表を作りました。

 

調査後は生物たちをしっかりと川にリリース。

協力してくれてありがとう!

 

昨日・今日とも30℃を越えとても暑い中の開催となりましたが、参加者の皆さんのご協力のお蔭で2日間ともスムーズに進行することができ、熱中症等も起きないまま無事に開催を終了することができました。

 

「知らない生き物に初めて出会えた」「川に入って面白かった」といった声を数多くいただいた今回の種川水中生物探検隊。

地元のお子さんでも自然と触れ合う機会が段々と減ってきている昨今、身近な自然に興味を持っていただく切っ掛けとして、手前味噌ですが「やっぱり有意義なイベントだなあ」と私も一スタッフとして思いを一層強くしました。

 

参加されたお子さんたちは、今日採取した生き物で何が一番心に残ったかな?

これからも川の生き物たちに親しみを持ってたくさん調べていってもらえたら、何よりも嬉しく思います!

 

今年度の探検隊の皆さま、活動お疲れ様でした。ご参加ありがとうございました!

来年度の開催もどうかお楽しみに😊

 

 

 

 

 

written by イヨボヤ通信blog

【身近なメダカ展ミニ企画】メダカ大投票 結果発表!

2022年08月25日

今年度も好評のうちに幕を閉じた

イヨボヤ会館夏の特別展「身近なメダカ展」

そんな中、エースメダカの座を狙う争いは、日を追うごとに熾烈を極めていたのであった―――。

 

 

 

 

・・・というわけで、先日開催したミニ特別展「身近なメダカ展」の会場で、展示全6品種の人気投票を実施しました!

 

 

ここでは、注目の結果順位を各品種の紹介とともに発表いたします!

 

 

◆◇第6位◇◆

ヒメダカ 得票数:26票

改良メダカの元祖

 野生の黒メダカから突然変異で生まれた品種です。

 「緋目高」とは「緋色(赤色)のメダカ」という意味で、江戸時代末期に刊行された図鑑にはすでに掲載されており、今に続く改良メダカの元祖とも呼べるメダカです。

 黒メダカにはない鮮やかな色をしているので野生には存在しないと思われがちですが、黒メダカの変異種なので、野生下でも稀に確認することができます。

 

 

◆◇第5位◇◆

透明鱗三色 得票数:36票

まるで錦鯉のよう

 2012年に作出されたメダカです。

 同じ柄の個体が存在することはなく、好きな柄を選別して自分好みの三色柄を作り出す愛好家の方もいるようです。

 鱗に色はなく、体の色が透ける特徴を利用して柄を表現しています。

 赤・白・黒の三色は、まるで錦鯉を見ているようです。

 

 

◆◇第4位◇◆

黒メダカ(正式名:キタノメダカ) 得票数:38票

水辺に生息している野生のメダカ

 昔から日本の水辺に生息しているメダカです。

 観賞用の改良メダカのルーツをたどると、この野生の黒メダカに行きつきます。

 場所によってはすでに見かけることが少なくなりつつあり、現在ではある意味、改良品種のメダカよりも希少な存在となっています。

 

 

◆◇第3位◇◆

琥珀ラメ 得票数:43票

宝石のような輝き

 2015年に作出されたメダカです。

 琥珀メダカにラメの入った品種です。

 琥珀メダカは2004年に作出され、宝石の「琥珀」を連想させる体色からその名が付けられました。

 その後改良を重ね、実に11年の歳月を経て多色ラメが入った「琥珀ラメ」という品種が誕生しました。

 

 

◆◇第2位◇◆

楊貴妃 得票数:64票

改良メダカ二大品種の一つ

 2004年に作出されたメダカです。

 全身が朱赤体色で、ヒメダカの赤色を強く出した品種です。この品種の作出により、メダカが赤い色素を保有できることが初めて確認されました。

 楊貴妃の登場と共に改良メダカへの注目度が一気に高まり、現在のメダカ人気の火付け役となった改良メダカです。

 世界三大美人のひとりである「楊貴妃」を名前の由来にしています。

 幹之メダカと共に現在の改良メダカの二大品種の一つです。

 

 

◆◇第1位◇◆

幹之 得票数:96票

改良メダカ二大品種の一つ

 2007年に初めて発見されたメダカです。

 背中の強く光沢のある光が特徴のメダカで、現在ではその特徴を「体外光」と呼びます。

 幹之メダカを交配して作出された品種が数多くあり、楊貴妃メダカと共に現在の改良メダカが根づく要因となった二大代表品種の一つです。

 発見者の娘さんの名前から「幹之(みゆき)」の名が付けられました。

 

 

 

総勢で303名の皆さんに投票いただきました。

皆さんのお気に入りのメダカは何位に入りましたか?

たくさんのご参加ありがとうございました!(´∇`)

 

 

 

 

 

 

written by 2022年度イベント

鮭公園で植樹活動を行っていただきました

2022年05月28日

村上市鮭公園 植樹活動 R4年5月28日

村上岩船ロータリークラブの皆様に、鮭公園で植樹活動を行っていただきました。

 

 

毎年実施いただいている活動で、今年は公園北口付近に低木のサルスベリを植えていただき、さらに草刈りもしていただきました。

 

サルスベリの苗

 

北口付近がサルスベリの花に彩られる日が楽しみです。

 

村上岩船ロータリークラブの皆様、今年もご厚情ありがとうございました。

written by 職員H

「種川水中生物探検隊」を開催しました!

2021年07月27日

先日7月24日(土)、種川水中生物探検隊を開催しました!

イベント詳細はコチラ※リンク先が開きます

 

昨年はコロナ禍でイベントを開催せず、一昨年は雨天で中止。

今年探検隊は実に3年振りの開催となりました。

 

講師の先生には、今年も 自然保護協会 自然観察指導員の富樫繁春先生をお迎えし、川での生物採取のやり方や採取した生物の調査方法について非常に詳しくご指導いただきました。

 

県の保護河川に指定されている種川は、普段は何人たりとも川に入ること自体が禁じられている川。

鮭のみならず四季を通して様々な希少生物の生息地として守られています。

このイベントでは県の特別な許可を得て、隊員の皆さんと調査を行いました。

 

当日は朝から暑い日でしたが、熱中症対策で少し時間を短縮しつつ休憩を取りつつ、さらにコロナ対策にも皆さんにご協力いただきながら、なんとか無事に開催を完遂することができました。

 

ではでは、イベントの模様を写真を追ってご紹介します!

 

朝、開校式の様子。

新型コロナウイルス感染症対策のため、参加者の皆さんには手指の消毒・マスクの着用の確認・検温を経て開催がスタートしました。

 

 

土手を越えて三面川分流の種川まで移動。徒歩1~2分の距離です。

 

 

到着すると、まずは富樫先生から「種川とはどのような川なのか」「川に入って生物採取するやり方」など具体的なレクチャーいただきました。

 

 

いよいよみんなで川の中へ。

 

 

網とバケツを手に生物を探す参加者の皆様。いっぱい採取できたかな?

 

 

川から上がった後は、休憩を挟んでから生物の調査を開始。

図鑑を使って各自採取した生物の種類と採取数を調べました。

今年も 魚やエビ、カニ、水生昆虫 など、様々な種類の生き物か採取できたようです。

その中にはスナヤツメ(新潟県準絶滅危惧) トミヨ(新潟県絶滅危惧Ⅰ類) などの希少種も。

 

スナヤツメ

 

先生の詳しい解説に、小学生の皆さんのみならず一緒に参加された保護者の皆さんも熱心に聞き入っていらっしゃいました。

 

 

最後はしっかり元いた場所へと生き物たちをリリースしました。

 

 

閉校式で先生も述べられていましたが、参加された皆さん全員が採取から調査まで非常に熱心に取り組まれていたのが印象的でした。

今回のイベントが皆さんの中で、種川の環境と生態系に興味を持つ一つのキッカケになったならとても嬉しいと思います。

 

また、これも先生が仰っていたことなのですが、先述で確認されたトミヨが現在生息している県内河川は、もはや市内の荒川と三面川のみなのだそうです。

そんな中ここ数年種川に生息する個体数に増加が見られるとのことで、今回の調査でもトミヨが何匹も確認できて大変喜ばしいとのこと。

普段館内の観察窓から種川水中を覗いている我々スタッフも、最近になってトミヨを見かけることが飛躍的に多くなり、気にかけていたことだったので、とっても嬉しい調査結果でした。

 

 

全体として、隊員の皆さんにとても熱心に取り組んでいただけたお陰でとても素晴らしいイベントになったと思います!

隊員の皆様、あらためてご参加ありがとうございました。

また来年の探検隊まで、お楽しみに~!

written by 職員H

植樹活動を行って頂きました

2021年05月17日

村上市鮭公園 植樹活動 5月15日

村上岩船ロータリークラブの皆様が、村上市鮭公園(滝ステージ周辺)で植樹活動を行って頂きました。

毎年実施頂いている活動で、今年は、枝垂れ桜、マツバギク、芝生を植えて頂きました。

大変、ありがとうございます。

 

枝垂れ桜

 

マツバギク

 

村上岩船ロータリークラブの皆様

written by 館長

「にこにこエサやり体験」開催中!

2021年04月25日

昨日から会館前広場に設置した特設プールにて、ニジマスのエサやり体験が始まりました。

※イベント詳細はコチラ(リンク先が開きます)

 

去年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止していたこのイベント、今年は感染症対策を徹底しての復活となりました。

まだ小さいニジマスたちですが、これから夏までどんどん食べてどんどん大きくなりますよ(*^-^*)

written by 職員H

「春の花一輪挿し運動」に参加しています!

2021年03月18日

今年も村上地域まちづくり協議会 環境整備会さん主催の「花一輪挿し運動(3/1~3/31)」に参加しています。

花は正面玄関先に飾ってます!

昨日今日と、頂いてきた桃の花が一輪また一輪と開いてきました。

冬の終わりと春の訪れを感じると、なんだかそれだけで明るい気分になりますね。

 

こういう時期ではありますが、来館されるお客様も、春の花を見て穏やかな気持ちで館内を楽しんでいただければと思います(*´ω`*)

written by 職員H

鮭公園の大池清掃を行いました!

2021年03月09日

本日3月9日、春先の恒例大池の大清掃を行いました。

幸いにも今日は抜けるような晴天!きれいな池で新年度を迎えるため、冬の間に池の底に溜まった澱みを取り除きました(´∇`)

 

 

【本日の清掃手順】

1. 池のコイたちを全て別の場所に移動させる

2. 池の水を抜く

3. 底の汚れをゴシゴシする

4. きれいになった底面を乾かす ←今ココ!

 

 

今後は池の水を抜いた状態で4月下旬頃まで乾かし、その後水を入れコイを戻す予定です。

同時に、冬季期間コイの体調管理のためにお休みしていた「コイのエサやり」も満を持して再開する予定ですので、お楽しみに!

危ないので、乾かしている間地続きだからといって大池に入らないように気をつけてくださいね(´ω`)

 

公園日和の暖かさになるまであと少し!本格的な春がより一層待ち遠しくなりました。

written by 職員H

普通救急救命講習を受けてきました!

2021年02月17日

今日は公社管理の他施設職員と共に「普通救急救命講習」を受講してきました。

以前受講してから3年経ったということでの受講なので、ほぼ全ての職員が再講習です。

(公社職員は原則として皆、普通救命講習修了証を持った救命技能保持者です)

前回の講習内容を思い出しながらの講習だったんですが、やはりコロナ禍に関連して前回からちょっと変化している点もいくつかあり、とても勉強になりました。

 

赤ちゃんからシニア世代まで、毎日様々なお客様がご来館するイヨボヤ会館。

館内でもしもの時があっても職員間で連携してちゃんとお客様の命を守れるよう、今後もしっかりと学んでいきたいと思います!

 

 

喉に異物を詰まらせたときの除去法

 

怪我をした時の止血法

written by 職員H